ブログ

第5話 ふぐの歴史を紐解く-日本編- シリーズその①

2014.7.4 カテゴリー:とらふぐのあれこれ, ふぐの歴史について

 

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。



 我が国日本でいつ頃から〝ふぐ〟は食用とされていたのでしょうか?

 縄文時代に、貝塚からフグの歯が発見されていることから、2000年前から食べていたのではないかと、考えられています。どのような食べ方をしていたのかは不明ですが、沢山の人が無くなったのではないかと、言われています。

 日本の歴史の中で、「ふぐ」にまつわる歴史上の人物は、〝豊臣秀吉〟〝伊藤博文〟〝坂東三津五郎〟と言えます。それでは、ふぐの歴史を紐解いてみましょう。

  文禄元年(1592年)、豊臣秀吉は「フグ食禁止令」を発令しました。秀吉は、朝鮮出兵に向けて16万の兵士を佐賀県の名護屋に布陣させた折、フグを食べて命を落とす者が続出したためです。人数は明らかではありませんが、戦に行く前に多量の兵士が死んだことが敗戦につながったと考えられます。また、政権が徳川家に変わった後も、武家の主がフグを食べて命を落とした折は、「家名断絶」という処分がされていました。

  明治21年(1888年)、下関でフグを食した初代総理大臣の伊藤博文は、あまりの美味しさに感動し、山口県のみでフグ食を解禁しました。老舗割烹旅館「春帆楼」に立ち寄った時、しけが続いて漁もできず魚がないため、女将が禁令を承知の上で、〝とらふぐ〟をだしたところ、伊藤博文は、「こんな美味しいものを禁止するのはおかしい」と当時の山口県知事に申し出たことでフグ食解禁となり、全国に広がりました。今日、私達がとらふぐを養殖出来るのも、伊藤博文のおかげと言えます。

  昭和24年(1949年)東京都は、「フグの取締まりに関する条例」を制定して、フグ処理師の免許が交付されました。フグ処理師の免許は、各都道府県の条例や要綱で定められています。しかし、岩手県と山梨県の2県だけは、フグ処理師の資格がありません。また、講習会のみで資格が交付される県もあり、一部の専門家は、フグ処理師を国家資格として統一できないものかと疑問視する声もあります。

  昭和50年(1975年)、歌舞伎役者で人間国宝の八代目坂東三津五郎は、とらふぐの肝による中毒で急死し、世間を驚かせました。坂東三津五郎は、好物であるとらふぐの肝を4人前も食らげ、フグ中毒で亡くなりました。この事件は、「もう一皿」とせがむ坂東三津五郎に板前が料理を出したことが争点となりました。業務上過失致死罪及び京都府条例違反で執行猶予付の禁固刑という有罪判決が出ました。特に、とらふぐの肝臓と卵巣は、ふぐ毒(テトロドトキシン)という猛毒を有していることは、ぜひこの機会に皆さんに知って頂きたいと思います。また、家庭で調理する時は、フグ処理師が処理したフグを召し上がって下さい。

 第5話は、ここまで。第6話をお楽しみに。

 天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三

第4話 陸上とらふぐ養殖について

2014.6.24 カテゴリー:とらふぐのあれこれ, ふぐの歴史について

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。



陸上とらふぐ養殖は、大きく分けて3種類あります。

①主として1995年頃から中国で発展した素掘り池での養殖です。養殖密度は少なく、換水量も少なく、いわゆる放的な養殖方法と言えます。日本でも海老の養殖池を用いて行われていますが経営体は少数です。

IMG_3347
②日本のとらふぐ陸上養殖の主流となっているのが掛け流し式養殖です。ポンプを使って汲み上げた海水を養殖タンクごとに必要なだけ給水する方法です。天草海産もこの方式を採用しています。海面イケスや素掘りの池と違って、この養殖方式では屋内のタンクで養殖していて、とらふぐの状態を常時観察できるため、最適な飼育管理ができることが最大の特徴となります。ヒラメもこの方式で養殖されていますが、とらふぐはヒラメより活発に泳ぎますから水中の酸素消費量も多くなります。そのために液化酸素タンクを設置して、水槽ごとに水中の酸素濃度が管理できるようにしています。また、停電などに備えて非常用の発電機も備えています。一部の養殖場では稚魚の時期の成長を促進するために海水を温めています。このとき加温された排水の熱エネルギーは熱交換器で回収されて再利用されます。

養殖場水槽

③次に紹介するのが新しい試みとして、陸上養殖方法である閉鎖循環ろ過方式です。海水がない海岸から遠く離れた山間部でも養殖でき、海水を循環して使用するので熱エネルギーロスが少なく、外部からの病気の侵入の危険性も少なくなります。しかしながら、養殖場の新規設備費用が高いことや、人工海水の元も高価なことなどもあり、まだまだ普及するためには時間が掛かりそうです。
最新の陸上養殖として注目を浴びていいるのは、温泉とらふぐです。海が無い栃木県の那珂川町で、「町おこし」の一環として廃校した小学校を利用し、旅館や飲食店を巻き込みメディアにも取り上げられています。詳しくはこちら→http://ganso-onsentorahugu.com/

第4話は、ここまで。第5話をお楽しみに。

天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三

第3話 ふぐ毒(テトロドトキシン)について:シリーズその①

2014.5.31 カテゴリー:とらふぐのあれこれ, ふぐの種類と生態

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。



ふぐと言えば、すべてのふぐの種類に毒があると思われがちです。しかし、全く無毒のシロサバフグやサバフグ、カワフグ、卵巣や精巣、肝臓や皮に毒があるフグなど、多種多様です。フグ毒(テトロドトキシン)は下記の表の様に、種類の差や地域差、季節差があります。高級なフグは、〝フグの王様〟トラフグ、〝フグの女王〟マフグ、トラフグに似た中型種のカラスが挙げられます。

20140531_083326
日本産フグ中毒学的研究(谷巌)より

ではなぜ、フグは毒を持っているのでしょうか?

長い間フグ毒(テトロドトキシン)は、フグ自身が作りだしていると考えられてきました。しかし近年の研究の結果、食物連鎖(餌)で蓄積されていくことが分かりました。したがって、天然トラフグは毒性が強く、養殖トラフグは極めて毒性が少ない、または毒性が認められなかった、という検査結果が出ています。

天草海産の養殖場では、カラスや猫がトラフグを食べている姿を、何回も目撃しています。それも、内臓だけなんです!!愛情込めて育てたトラフグのことを考えると、ニャロメーと思いますが、これは、無毒に近いもしくは無毒のトラフグの証であると考えます。しかし食通の方は、毒があるからこそトラフグ、という考え方も根強く残っています。

いずれにしても、とらふぐ処理師が調理したとらふぐが、安心安全であることに変わりありません。釣りがお好きな皆さん、ご家庭ではくれぐれもフグを調理して食べられませんように!!

 

第3話は、ここまで。第4話をお楽しみに。

天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三

 

第2話 知られざるフグの生態について 

2014.5.18 カテゴリー:とらふぐのあれこれ, ふぐの種類と生態

フグは、①お腹を膨らませる、②瞬きをする、③噛み合う、④鳴く、⑤砂に埋まる⑥毒を持つといった特異的な習性を持っています。その習性を解説します。

①フグはお腹を膨らませる
お腹を膨らませる習性は、威嚇や自己防衛の際に胃の一部に水や空気を入れて膨張して
います。内臓を包む肋骨が無い為、お腹を膨らますことが出来ると考えられています。1
kgのとらふぐが体重以上も水を飲み込むことが出来るというから驚きです。私は陸上と
らふぐ養殖をしている中で、毎日水槽の中でお腹を膨らませている姿を見ます。威嚇や自
己防衛以外に、リラックスしている時お腹を膨らませているのではないかと考えます。

②フグは瞬きをする
魚には、一般的には瞼が無く、眼は開いたままで、閉じることができません。しかし、
フグは魚の中で唯一瞬きが出来ます。私も養殖をする中で何度も確認しており、特に苦しい時(海水がない場合)、によく見ることが出来ます。浅瀬をダイビングしている時も、クサフグが砂に潜り、眼だけを出していることもあります。

③フグは噛み合う
フグ科のフグの歯は、くちばし状になっており、上下2本、計4本の歯を持っています。
フグは鋭い歯で何でも噛み砕く雑食性です。この噛み合う習性は、天然とらふぐも養殖と
らふぐも変わりありません。フグ延縄漁では、ペンチが用意されており、フグが釣れる
とペンチで歯を折って活魚水槽に入れます。したがって、とらふぐの養殖の際は、歯切り
の作業が必須となります。噛み合いによって尾ひれや腹ひれが出血し、斃死することも多々
あります。出荷までに最低1年半かかるため、約5回歯切りが必要になります。

④フグは鳴く
フグは、空気や海水を胃に飲み込んでお腹を膨らませますが、その膨らます過程でグーグーと鳴きます。飲み込みながら、口を閉じる時に歯が擦れ合って音が出ると言われています。瞬きをする時と同様に、特に苦しい(出荷や歯切り)時に、お腹を膨らませながらグーグーと鳴く姿を見ます。

⑤フグは砂に埋まる
フグは奇麗お腹の部分を砂に埋めて生活する習性があります。陸上養殖の場合、水流が常にあるため、泳いでいるとらふぐが多いが、白子が熟成する1月~2月には、水槽の底にお腹を付けて休憩している姿をよく見ます。先日、下関市立しものせき水族館 「海響館」にとらふぐの生態について視察に行ってきました。とらふぐは、砂に埋まっていて、眼だけをギョロギョロさせていて、これが自然界のとらふぐの生態であることを知りました。

⑥フグは毒を持つ
フグは一般的に毒を持つ魚として知られています。その名は、テトロドトキシンと呼ばれています。フグは、食物連鎖によって食べることにより、毒を蓄積しているメカニズムは、近年解明されてきました。とらふぐは、〝ふぐの王様〟として知られていますが、皮や、身、白子には毒はありません。しかし、〝ふぐの女王〟として知られるマフグは、皮に毒性が強く、総毒量は最大です。また、身にも猛毒を持つドクサバフグやコモンダマシといったフグもいます。

第2話は、ここまで。第3話をお楽しみに。

天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三

第1話 〝ふぐの王様〟とらふぐって? 

2014.4.28 カテゴリー:とらふぐのあれこれ

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。



天草海産は、〝ふぐの王様〟とらふぐの陸上養殖・加工・販売を行っています。ふぐ類やとらふぐに特化したブログです。魅力あるとらふぐの知られざる生態や歴史を、詳しく解説していきます。

ふぐの種類は100以上が確認されており、日本近海で約40~50種類が生息しています。とらふぐ(Takifugu rubripes)は、フグ亜目フグ科トラフグ属に分類され、北海道より以南に生息し、日本海西部、東シナ海、黄海など広い場所で分布しています。熊本県天草周辺海域、瀬戸内海で産卵し、早いもので雄は2年、雌は3年で成熟します。とらふぐは、他のふぐより市場価格が高く、最も美味しいことから、〝ふくの王様〟や〝冬の味覚王〟とも呼ばれています。

とらふぐには、鍋の王様〝てっちり〟、海の宝石〝白子〟、究極の唐揚〝とらふぐ唐揚〟、など…、美味しい食べ方が沢山あります。その他、コラーゲンが沢山含まれている皮刺しや、熱燗でいただくひれ酒など最高級の贅沢を楽しむ事ができます。
とらふぐの特徴として、体色は背面暗緑色を帯びた黒色で、腹面は白色です。背面と腹面には荒いとげが密生しています。側面の胸びれの右上には白輪に囲まれた大黒紋があり、ふぐの王様の象徴ともいえます。とらふぐは、体長が80cmに達する大型種として知られています。腹ビレは白く、カラス(50cm前後の中型種で、とらふぐより価値が下がる)と区別されます。

第1話は、ここまで。第2話をお楽しみに。

天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三

   次のページ »